帯下（おりもの）は、大きく「臭いを伴うもの」と「臭気の無いもの」に分けられます。
臭気や生臭い臭いを伴う場合は、「湿熱の邪」が衝任脈や膣に入り帯下を下迫したり腐敗させるために発生し、多くは不快感を伴います。
西洋医学のトリコモナス・カンジダ・細菌感染に相当し、抗真菌剤や抗生物質が奏功しますが、微生物が原因ではなく体質的なものであれば中医学が優れています。
臭気の無い帯下は、膣の分泌液の増加によるもので多くの場合は虚弱体質が原因です。日常的に帯下があるために、異常に気がつかない場合もあります。体質的なものなので、中医学での治療対象となります。
●臭気を伴うもの
湿熱タイプ
月経時、産後の外陰部の不潔、性交に伴って湿熱の邪が侵入した・飲食の不摂生による脾胃の運化機能の低下が原因で生じた湿熱が下注したことによって、湿熱の邪が衝任脈や膣に停滞するもの。繰り返して発症した場合は、脾虚が影響している事が多く、脾の運化機能を高めることが必要です。
【症状】
生臭い乳白色の帯下・黄緑色で悪臭のある帯下・粘稠で血性の帯下が大量に発生・外陰部の強いかゆみ・膣の痛みを伴う
方剤：二妙散 三妙丸 四妙丸 五淋散 茵蔯五苓散
肝鬱湿熱タイプ
精神的ストレス・悩み・怒りなどで肝気が鬱滞して化熱し、脾の運化機能が障害されて生じた湿邪と熱が結びついて湿熱を形成した
飲食の不摂生で脾胃の運化機能が低下して湿邪が発生し、湿が盛んになって肝気を阻滞して化熱させ、湿邪と熱邪が結びついて湿熱を形成したなどの理由で、湿熱の邪が肝経に下注して帯下を引き起こし、肝経血分を損傷して出血させるもの。脾虚が影響している事が多く、脾の運化機能を高めることが必要です。
【症状】
粘稠で悪臭のある血が混じった黄色または白い帯下
いらいら・怒りっぽい・胸脇部のはり・舌質は紅・黄膩苔
方剤：竜胆瀉肝湯 加味逍遥散
●悪臭の無いもの
脾虚タイプ
飲食の不摂生・過労・先天的虚弱・慢性病などによって脾気が虚し、運化機能が低下して水湿を上輸することができなくなって、下注するために、帯下が増加するもの。
【症状】
臭気のない粘稠な白色の帯下がずっと続く
元気が無い・疲れやすい・食欲不振・話をするのがおっっくう・息切れ・むくみ・下痢・舌質は淡でぼってりとした舌・白舌苔・脈無力
方剤：完帯湯 参苓白朮散 啓脾湯
腎陽虚タイプ
先天的虚弱・慢性病・過度のセックス・多産・頻回の人工中絶などにより腎の陽気が損傷されて陰精を固摂できなくなって、精汁が流れ出るために帯下が増加するもの
【症状】
無臭で冷たい稀薄な白色の帯下が流れるように出る
顔色はどす黒い・元気が無い・寒がる・四肢の冷え・夜間頻尿・腰や膝がだるくて力が入らない・頭のふらつき・舌質が淡・脈弱遅
方剤：鹿角菟絲丸 収渋止帯湯 右帰丸
