病気の原因(病因)と発病を中医学の理論から考える
中医学では、体の臓腑や組織間には協調し合う関係があり、お互いに影響し合あいながら均衡を保ち、生命活動を維持していると考えています。
さらに人体と環境(外界の環境)もお互いが自立しながらも影響を及ぼす関係が成り立ちます。
体内や外界との関係の間に、何らかの均衡を破壊するような事項が生じ、自己回復できなかった場合に病気が生じるとされ、この均衡を破壊するような原因となる事項を、「病因」と呼んでいます。
まずは、病因となるものをご紹介しましょう。
代表的な病因には、六淫・伝染病・七情(過剰な情緒反応)・不適切な飲食・疲労倦怠・外傷や害虫・害獣による外傷などがあります。
また発病によって発生した物質や状態が、別の病気を引き起こす原因になることもあります。例えば、臓腑の気血水を巡らせる機能が低下して生じる痰のや瘀血は、それ自体が病気を引き起こす原因となります。
六淫は外感病邪の総称で、「風・寒・暑・湿・燥・火」の六つに分類されるため「六淫」と呼ばれています。
「風・寒・暑・湿・燥・火」は、正常な状況では、自然界に存在する自然変化であり、万物を成長させるために必要なものです。
人は、自然界との関わりの中で、大地にある大気や水穀の気(飲食物からのエネルギー)によって生かされ、四季に適応する能力をつけながら、成長していいきます。この段階では、六気は人の生命活動に深く関わりながらも、害になることはありません。
ただし、異常な気候変化により、激し過ぎたり足りかなった場合、季節のリズムから外れた気候、また急激な気候変化の状況により、人の正気が不足して抵抗力が弱まっている場合、六気が人体に侵入して病気を引き起こす原因となります。このような場合を「六淫」と呼び、六気と区別しています。
六淫によって惹き起こされる病気は、一般的には急性の症状となり、感冒や下痢などが該当します。
六淫による発病には次のような特徴があります。
①四季の変化・気候・居住する環境・従事する仕事などと関係がある
②二つ以上の邪気が結びついて発病させることがある
③発病の過程でお互いが影響しあい、転化する
④侵入ルートは、肌・口腔粘膜・鼻腔などの表である
風邪などの急性症状において、どの邪が関連しているのかを弁証して治療法を選ぶことは、早期の回復・治癒にはとても大切です。治療法を誤った場合には、より邪が深く入り込み、治癒までに時間がかかるだけではなく、正気も消耗して抵抗力を弱めることにもなりかねません。